PTSD




PTSDとは、ポストートラウマティック・ストレス・ディスオーダーの略で
正式には「外傷後ストレス障害」と訳されています。
地震や水害などの自然災害、爆発事故や交通事故などの人為災害、
犯罪被害、残虐行為、テロ、戦闘体験、心理学的支配な曝されたことに
よる精神的後遺症です。これらの出来事により命の安全を脅かされたり
大怪我をしたり、恐怖感や無力感を感じるなど、強い精神的衝撃を
受けたことが原因となります。

◎PTSD研究の歴史的背景について

19世紀このかた3度、心的外傷のそれぞれ1つの形が、公衆の意識の
表面に浮かび上がっています。どの時も、心的外傷の調査は政治的な
動きに伴って盛んになったものです。最初に浮かび上がったものは
ヒステリーで、女性の心的外傷の元型です。この研究は19世紀後期の
フランスにおいて、カトリック教会が教育、医療などの俗界を支配するのに
反対する政治運動の中から現れて発達しました。第2はシェルショック
(砲弾ショック)と戦闘神経症です。この研究は第一次大戦後のイギリス
とアメリカ合衆国とに始まり、ベトナム戦争後に頂点をきわめました。
それをつつむ政治的流れとは、戦争崇拝が崩壊し、反戦運動が成長した
ことです。最後の外傷は、ごく最近公衆の意識に上がったもので、性的暴力
と家庭内暴力です。その政治的な流れは西欧と北アメリカとにおける
フェミニスト運動です。現在のわれわれの心的外傷理解の基盤は、この
3つの別個の研究の流れを一つにしたものです。

◎PTSDの症状について

参考のために米国精神医学会による現行の
『精神疾患の診断・統計マニュアル第四版(DSM−W)』に記載されている
PTSDの診断基準を示しておきます。WHOによる『国際疾病分類第10版
(ICD−10)』も症状の内容としては、ほぼ同じものです。

A.患者は以下2つがともにあてはまる外傷的出来事に曝露した:
(1)実際にまたは危うく死ぬないし重症を負うような、あるいは自分
  または他人の身体的保全が脅かされるような、1つまたは複数の
  出来事を、その人が体験したり、目撃したり、直面した。
(2)患者の反応は、強い恐怖、無力感と戦慄を伴った。

B.外傷的出来事は、少なくても以下の1つの形で再体験させられ
  続けている:
(1)イメージや思考または知覚を含む、出来事の反復的で侵入的かつ
  苦痛な想起。
(2)出来事についての反復的で苦痛な夢。
(3)外傷的出来事が再び起こっているかのように行動したり、感じたりする
  (体験が蘇る感覚、錯覚、幻覚、および解離性フラッシュバックの
   エピソードなど。覚醒時または中毒時に起こるものも含む)。
(4)外傷的出来事の1面を象徴したり類似する、内的ないし外的な
   きっかけに曝露したときに感じる強い心理的苦痛。
(5)外傷的出来事の1面を象徴したり類似する、内的ないし外的な
   きっかけに曝露した際の生理学的反応性。

C.外傷に関連する刺激の持続的回避と全般的な反応性の麻痺
  (外傷以前には存在しなかったもの)で、以下のうち3つ(または
  それ以上)によって示される。
(1)外傷に関連する思考、感情、または会話を避けようとする努力。
(2)外傷を思い出させる活動、場所、または人物を避けようとする努力。
(3)外傷の重要な場面の想起不能。
(4)大事な活動への関心や参加の著しい減退。
(5)孤立したような、または周囲の人々から疎遠になった感じ。
(6)感情領域の狭小化(たとえば愛情を感じなくなる)。
(7)将来が短縮した感覚(たとえば、キャリア、結婚、子供を持つこと
   通常の寿命を期待しない)。

D.持続的な覚醒昂進症状(外傷以前には存在しなかったもの)で、
  以下のうち2つ(またはそれ以上)によって示される。
(1)入眠、または睡眠維持の困難。
(2)易刺激性または怒りの爆発。
(3)集中困難。
(4)過度の警戒心。
(5)過剰な驚愕反応。

E.障害(基準B,C,およびDの症状)の持続期間が1ヶ月以上。

F.障害は、臨床上強い苦痛、または社会的、職業的、ないし他の
  重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

このDSM−WによるPTSD症状は@再体験症状、A回避症状
B覚醒昂進症状の3つのグループから構成されます。この3つの
グループの症状が1ヶ月以上にわたって持続し、それにより
主観的苦痛や生活機能・社会機能障害が明らかに認められた時
PTSDと診断されます。
さらに、この3つのグループの症状を詳しく次の頁で述べます。 



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