以下の文は、NPO小諸いずみ会会報2003年12月号より
「いのちの家」所長の、川崎経子先生の文章を、御本人に
直接お会いし、許可を得て、掲載しております。






最近こんな電話があった。「投資によって退職金の4割近くを失った
夫が、今度は高価な○○菩薩像、××如来財宝護符、招き猫、
水晶玉、掛け軸等の開運グッズを次々に購入し始めた。止めさせ
たいのだが・・・・」という戸惑いの相談だった。本当の話である。

日本人はオカルト(占い、霊現象、超能力)に弱い。だから、
カルト宗教に霊界で脅されて全財産を奪われる悲劇は今も後を
絶たない。

「手相の勉強中です。手を見せて頂けませんか」と街で声をかける
のは統一教会である。「いい手相ですね」と褒め、次に必ず「あっ!
転換期の相が出ています。偉い手相の先生が近くに来ているので
見て貰いましょう。」と誘い、悪い因縁を断つという高い印鑑を
買わせる。これが入り口である。誘いを断れなければ次の段階は
ビデオセンターで人生の学びである。そこでマインドコントロール
され、いつの間にか組織のため全てを捧げ尽くす信者になって
しまう。手相は統一教会の金集めと人集めに絶対欠かせない
絶大な効果を持つ重要な手段らしい。だから20年近くも
「転換期の相ですね。」という全く変わらないトークマニュアルで、
違法な伝道と金集めに精を出しているのである。

はっきり断言する。オカルトはすべてインチキである。
今朝の新聞に、易学、運命学の最高権威を自称する
○○易団発行の広告シラシが入っていた。そこには
「@生命線のある切れ目や突然の斑点は、病気や
ケガ等身体的トラブルを起こす。A頭脳線の切れ目は
頭のケガを予知する。B・・C・・」とある。
まっとうな信仰を持つ者にとっては、手相など笑止千万であるが、
ここまで読んできて、ふと何か気になって自分の手の平に視線が
いく人は、心が弱かった時にカルトの餌食になりやすい。
要注意である!

もし手相が当たったらどんな世の中になるだろうか。くだらない
空想であるがバカらしさを我慢して読んで一緒に考えて頂きたい。


成田空港に突如手相占い機「生命線ピンポンブー」が
設置される。この機械には生命線のデーターが細大
洩らさずインプットされ、片側には時間の目盛りがあり、
フライトの時間に合わせるようになっている。これに手を
置けばコンピューターが素早く作動し、異常なしの
場合は「ピンポーン」、キケンありは「ブー」の信号音で、
フライト中の危険の有無を知らせてくれる。客は搭乗前に
必ずチェックを受けることを義務づけられる。時として、
次のようなアナウンスが流れ、数百人の乗客が命拾い
することが起りうる。

「本日の○時○分発○便○○行きにご搭乗の皆様。
『生命線ピンポンブー検査』の結果、ほぼ全員に
搭乗危険のサインが出ました。ただ今、機体を
厳重調査中です。急遽別の飛行機を準備し、
パイロットも交代させます。お荷物も再度厳重チェックを
させて頂きます。皆様も再度『ピンポンブー検査』を
お受け下さい。」

翌日の新聞のトップ見出しで、飛行機の重大事故に繋がる
故障がピンポンブーで発見され、大事故が未然に防げたことを
書き立てるのだ。そうなると世界中から注文が殺到する。
旅行会社もバス会社も、テロに狙われそうな建物も競って
『生命線ピンポンブー』を備え付けるようになる。ユニセフも
地雷危険地帯の村々に「ピンポンブー」を設置し、村民は一日
一回の検査を受けることが義務づけられる。交通違反の
取締りは、スピード違反ではなく、運転席にいる人の手を
「ピンポンブー」で検査し、「ブー」っと鳴ったら運転を
中止させればよい。とにかく庶民の幸せは守られるようになり、
「ピンポンブー」考案者はノーベル平和賞もノーベル物理学賞も
すべて一人占めにすることになるのである。

「ピンポンブーは三秒、怪我一生」「三秒ピンポンブーでで
愉快な一日」「一家に一台、我が家は安泰」というような
キャッチフレーズで「ホームピンポンブー」も発売される。
街角にも電話ボックスに似たピンポンブーボックスが設けられ、
百円玉一つで今日の命の安全を確かめられるようになる。
人々は毎朝出勤前にピンポンブーに手を置き、「ブー」と
鳴ったら時間を遅らせ、いつもと違う交通機関を利用して
出勤する。寝坊して遅刻する時も「今朝はピンポンブーが・・」と
ピンポンブーのせいにすれば上司も文句は言えない。
ズル休みする時も利用できる。

このように「もし手相が当たったら」とちょっと想像の世界に
羽ばたくだけで、万華鏡を覗くより素晴らしい光景が次々に
展開される。実に愉快である。ところが、良いことばかり
ではない。人々は誰でも自分の死期についての情報を街角の
ピンポンブーボックスで百円玉一個で手軽に知ることが
できるようになったのである。思わぬ混乱が政界に、
財界に、家庭に持ち上がる。ピンポンブーで死期を
知った人の心は、死刑宣告を受けた被告以上に揺れ動く。
「ピンポンブー性うつ病」「ピンポンブー性社会不適応」が
蔓延するだろう。その上、医者までが聴診器以上の威力を
持つピンポンブーに頼って診断を始めることになる。輪ゴム
手相矯正法は一般化し病院の待合室には手に
輪ゴムをはめて生命線の皺の部分の補強・矯正に
努めている患者さんの姿が見られるし、看護師達の毎朝の
日課は入院患者の手の輪ゴムのはめ替え作業となるはずである。

以上、手相の巻き起こす悲喜こもごもの事柄を想像してみた。
もし手相が60%くらいでも当たったら、21世紀は手相革命の
嵐が吹き荒れること間違いない。社会通念も、社会体制も、
社会秩序も、知能線や運命線の関係で教育すらも、その
受ける影響は計り知れない。当たるというなら、ピンポンブーを
作って見せて欲しい。しかし残念なことに手相は当たらないから、
実現は絶対に不可能である。

ここでもう一つ考えたい問題がある。どうして足の裏相、あるいは
眉間相、歯並び相、耳相・・などではないのだろうか。

まず、足の裏相でない理由をバカらしさを嫌わずに考えてみた。
足の裏にも皺がある。足は体全体を支え、大地にしっかり
着いている重要な部分である。どうして無視されるのか。
勝手な推測だが「大道易者に見て貰うのだから」と道の真ん中で
パンティストッキングを脱げる女性など皆無だろう。商売にならない。
まして、むくつけき男性の水虫だらけのプンプン臭う足の裏を、
ヌーっと足裏相見の鼻先に突きつけられたら、とても我慢
できないだろう。だから足裏相は福永法源以外に手がけた人は
いない。やはり小手先で出来る一番手っ取り早いのは「手」で
あるなんて駄洒落にもならない。

では眉間相はどうか。眉間は急所である。また喜怒哀楽の
情とも深く関わっている。しかし女性に「ハイ、眉間に八の字に
皺を寄せて。ダメダメもっと力を入れて!そのままじーっとしていて
下さい」なんてやったら、子どものにらめっこ遊びであるまいし、
美容にも悪いし、客足は遠のくであろう。やはり商売上がったり
である。

では歯並び相はどうか。これは歯科医という強敵がいる。
「こういう歯並びは後家相です」「この歯から抜ける人は家運
衰退です」などと言おうものなら「うちの患者さんはちっとも
そんなことありません」と反論されかねない。何しろ歯医者は、
来る日も来る日も多くの患者の歯を診て生活している。豊富な
カルテとデータもあり、歯科医には歯が立たない。それに歯なしの
老人は易の対象にならない。まさか統一教会の経済担当の
若者が売り歩いている運命観相協会の印鑑みたいに「当方の
運命観相入れ歯を入れれば・・」という具合にもいかず、
ハナシにならないのである。

そんなこんなで易者の商売上の身勝手から「やはり手っ取り
早く手軽なのは手相」という結論になったのではなかろうか。
昔は亀の甲羅を火に炙ってできる亀裂で吉凶禍福を占って
いたが、「それよりは自分の手の皺の方がよりよく運勢が
分かるのではないか」という人がいて手相になったのではないかと
想像する人がいる。手相について、もっと詳しい知識をお持ちの
方は是非当方までご一報いただきたい。お教え頂きたい点は
次の通りである。

@なぜ、眉間相や歯並び相でなくて手相なのか。
A誰の発見、発明になるのか。手相の生成と発展の歴史。
B統計確立の所産というが、その学問的統計は資料はどこに
 あるのか。
C手相が西欧で行われていない理由。
以上の点につき ご教示願えれば幸いである。
お教えいただいた点については、私と同じように手相を頑迷な
までに否定している人々を啓発させるため、次の号で発表させて
いただこう。

いずれにしても、単なる世迷言の遊びに過ぎない手相を、
バカらしさを我慢して取り上げたのは、こうしたものが
カルト宗教の入り口となっているからである。でもここまで
書いただけで、もういい加減うんざりし、自分で自分がみじめに
感じられ、溜息が出てくる。といって連載は打ち切れない。
お読み下さった皆様もご苦労さまでした。次回は姓名判断に
ついて述べます。





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