以下の文は、NPO小諸いずみ会会報2006年3月号より
「いのちの家」所長の、川崎経子先生の文章を、御本人に
直接お会いし、許可を得て、掲載しております。






 人は誰でも無意識層に根を張る誤った思い込みを持っています。
自分自身で気づいて、かなり努力しない限り、思い込みは
はずれません。逆に条件が整い、その気になれば次から次へと
独断と偏見の産物として思い込みは生まれます。全く始末に負えません。
 統一協会はこれを利用して、霊界や因縁、神の導きを実感させる
いくつかのシステムを持っています。疲労が滲み出ているのに明るい声
で「しんぜん会」や「野の花会」と名乗って訪問販売に訪れる若者は、
統一協会の信者です。そしてその活動こそが、金儲けをかねた思い込みを
作り出す訓練の場の一つです。彼らはマイクロ改造車に数人ずつ重なり
合って寝るのです。小さいバスの中で寝食を共にして全国を巡り歩きます。
10数年前までは北海道産の海産物の珍味を一人平均10キロは肩に担い、
早朝から深夜まで、ときには玄関先で歌ったり踊ったりしてまで足を棒に
して売り歩いていました。隊員の睡眠不足はまだしも、運転する隊員の
睡眠不足は、度重なる事故を頻発させたものでした。
 私はそのことに我慢ならず、尾鷲市でガードレールに激突、2名死亡、
5名重軽傷のマイクロ事故(1988年12月)の実態を綿密に調べ拙書
「統一協会の素顔」(1990年初版、教文館)で、世論に訴えました。
その甲斐(?)あってか、歌って踊っての珍味売りは姿を消し「しんぜん会」
「野の百合会」の雑貨売りに切り替わりました。また2−4時間睡眠の
過酷なスケジュールも改善されました。
 しかしマイクロは激戦の前線部門であることに変わりありません。
それだけに彼らには忘れ難い深い印象を残します。一般社会にいたら
絶対に経験できない行商活動に、なりふり構わず精魂をこめて力の限り
全力投入するのですから、そこに今までにない充実感、達成感、満足感
があります。また仲間の助け合い、励まし合い、慰め合いの美しい花も
開きます。だからこそ、辛い筈なのに「とても楽しかった」という感想
を持つ人が多いのです。
 このマイクロで、彼らは心身は疲れ果て限界状況の中でキラキラ輝く
理想を夢見ながら歩みます。朦朧としていれば暗示にかかり易く思い込み
も強まります。内部でも「マイクロは神体験の場」と言われています。
だからこそ、誰でも一度はマイクロを経験させるようにしているのです。
 例えば、朝から売り上げの伸びる日は神の恵みと喜びの神体験の日です。
全く売れない日には、厳しい神の愛の鞭を感じれば、これも神体験です。
となると、晴天でも、雨天でも風が吹いても、無意識の中ですべてが
尊い神体験に脚色、編集されるのです。耐えられないほどの辛さも
「お父様(文鮮明)の血と汗と涙の路程」を偲び、メシアの心情に与る
貴重な神体験となります。このように神体験のラッシュが続いて、深夜の
反省会では、互いに仲間たちと神体験を話し合い、共有するのですから、
いつの間にか何でも神や霊界に結び付けて考える思考回路が確立します。
疲労で朦朧とした精神状態が、さらにそのことへの確信を深めていきます。
そしていつの間にか霊界や因縁の中にスッポリ埋没した人間になって
しまうのです。
 例えば統一協会では、怪我などは霊界の因縁に結び付けます。
そして、右の怪我は公的蕩滅(他人の罪の償い)左は私的蕩滅
(自分の罪の償い)となるそうです。怪我の程度より右か左かが
注目され、同情されたり冷たい目でみられたりすることになります。
ヤレヤレです。
 災害が起きるのも大抵は日本の信者の献金が目標に達しなかった
責任の蕩滅と説明されます。中越地震の家の下敷きになった
おばあさんが奇跡的に救出されたのは、一和(統一協会系製薬会社)
の朝鮮人参を飲んでいたので、霊界が働いたからなのだそうです。
これもヤレヤレです。
 10数年前の雲仙普賢岳の爆発と火砕流は、昔、島原の乱の時、
住民がキリシタンを迫害した蕩滅であり、最近のアメリカ南部の
ハリケーンは、本来は日本が打たれるべきところ、日本が大災害に
見舞われると摂理(金集めの計画)が行き詰まるので、
代理蕩滅として起こされたものだと言われているそうです。
統一協会信者が聞いた通りを信じるとしたら本当に怖いことです。
 このようなことを聞かされていると、信者たちは目に見えない
何か不気味な力の強迫観念の虜となっていくことは容易に
想像つきます。また苦しむ人を見ても、当然その人が「負うべき
蕩滅」と冷たく考える冷酷な人間も出来上がります。その上
どんな出来事も思い込み次第で強烈な神体験や霊界の因縁に
結びつける特技が自然に出来上がります。そしてその特技で
自分の心の自由まで自分で縛り上げ、身動きもままならない
状態になってしまうのです。自分で因縁や例、神体験を
つくり続けていく限り、彼らは組織に忠実なロボットで
あり続けるのです。
 その他に組織と個人が協力して捏造する神体験というものも
あります。その一例として、10数年前、全国の原研で感動の
嵐を呼んだ神体験の証しを紹介します。
 A子さんは大学原研に所属し、夏休みに「野の花会」で
当時扱っていたメタライトのカードを売るマイクロ隊で
活動していたときのことです。ところがどうしたことか、
A子さんの売り上げが急速に落ち、一週間低迷しました。
A子さんは体調に「徹夜祈祷をしてでも頑張れ」と
厳しく言われました。しかしマイクロ活動も3週間を過ぎ、
身体はくたくたで限界です。彼女がどんなに疲れ切って
いたかを示すエピソードがあります。
 ある日、彼女は居眠りをしながら何回か転倒したり
電柱に衝突したりして、道を歩いていました。とうとう
バス停の脇でちょっと仮眠をとったのです。夢の中で
バスが停まり、一人の婦人が降りてきてA子さんを
病人と思って走り寄ってくれました。A子さんは夢の中
でしたが、ここぞとばかりカード売りのトークをしたのです。
やがて目覚めてみると「カード5枚頂きました」という
メモと一緒に5千円が風で飛ばされないように小石をのせて
カバンの上に置かれていたというのです。夢と
思っていたのは、現実の出来事だったのです。
 このように彼女の体力は、毎日のマイクロ活動でもはや
限界でした。祈る力は残っていません。「明日の活動の
ためには寝るしかない」と彼女はいつものように寝袋の
中に入りました。真夏の熱帯夜でもマイクロの窓は
閉め切ったまま。蒸し風呂さながらですが、疲れ切った
少女たちは横になると同時に爆睡します。そして翌朝、
早朝から夢うつつのまま第一ラウンドが開始されました。
ところが最初に入った家で、対応に出てきた青年が
あわてて奥へ報告に行ったあと、奥から悠然と現れた
男性の一声で、若い者がゾロゾロ出てきて、最後の
一枚まで一気に完売してしまいました。実は、あとから
気付くのですが、そこはやくざの住居だったのです。
親分さんは「野の花会から若い女性が来ている」と
報告を受け、どこの組の姐御が来たのかと玄関に
出てみると、疲れ切った顔の少女が一生懸命
「ボランティアとして貧しい人々のためにこの品物を
売っています」と口上を述べていたので、その心意気に
感じて子分たちに一枚残らず買うことを命じたの
でした。原研がこの稀な体験を放っておく筈はありません。
彼女の体験は「バッグ売り(1バッグの中身すべてを
一気に売った)A子さん」という立派な神体験の
証しになって、日本中の原研に伝えら得るところとなりました。
 勿論、証しの中でA子さんは前の晩は一睡もせずに
自分の不信仰を悔い改め、お父様(文鮮明)に涙の
熱祷を献げ、その結果、霊界の善霊の協助を
受けて奇跡的なバッグ売りとなったという証しに
なっています。これは捏造された神体験ですが、どんなに
多くの原研の学生たちがこの話を信じ、自分の身体に
鞭打ってみ旨(文鮮明の命令)に没頭したことでしょうか。
罪作りなウソッパチな霊界協力の話です。
 捏造された神体験や霊界の祟りの脅迫などでその気に
させるのも、統一協会のマインド・コントロールの
古くからのオーソドックスな相も変らぬ手口なのです。
「実感」「思い込み」などというものは、その気に
なれば容易に作り出せるものなのです。






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